2005年は、全体的に小粒と言いますか、ドングリの背比べと言いますか、やや薄味な印象を受けました。昨年や一昨年にはあった、頭グラグラ揺さぶられるような強烈な作品は少なかったように感じました。映画誕生100年からすでに10年が経ち、ここにきてこの漠然とした停滞感はちょっと不安な気持ちになります。この原因が何なのかよく分かりませんが、わたしたち鑑賞者としては、とりあえず一本でも多くの優れた作品をきちんと観続けていくことが一番大切なのではないでしょうか。
2005年に劇場一般公開された作品が対象です。
(今年も外国映画部門のみの選出となりました)

   

■外国映画部門

1) ティム・バートンのコープスブライド(2005/英/ティム・バートン、マイク・ジョンソン) 
2) アワーミュージック(2004/仏/ジャン=リュック・ゴダール)
3) サイドウェイ(2004/米・ハンガリー/アレクサンダー・ペイン)
4) きみに読む物語(2004/米/ニック・カサヴェテス)
5) チーム★アメリカ/ワールドポリス(2004/米/トレイ・パーカー)
6) カンフーハッスル(2004/中国・米/チャウ・シンチー)
7) さよなら、さよならハリウッド(2002/米/ウディ・アレン)
8) ミリオンダラー・ベイビー(2004/米/クリント・イーストウッド)
9) ライフ・アクアティック(2005/米/ウェス・アンダーソン)
10) 宇宙戦争(2005/米/スティーヴン・スピルバーグ)

::: 次点 :::
11) キング・コング(2005/ニュージーランド・米/ピーター・ジャクソン)
12) チャーリーとチョコレート工場(2005/米・英/ティム・バートン)

::: 特別賞 :::
ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム(2005/米・英/マーティン・スコセッシ)

※()内は製作年/制作国/監督です。
  日本国内で2005年1月1日から12月31日までに劇場一般 公開された映画から選出しました。
  順位は暫定的なものです。


アニメーションは、フレームに映し出される全てのものが作り手の意図を反映し、そのコントロール下に存在します。そのため、よりダイレクトに、メッセージやテーマ、作り手の思いが伝わってくることが多く、それが映画の枠を飛び越えて胸に迫ってくる瞬間に、ぼくなどはグッときてしまうのです。『ティム・バートンのコープスブライド』も、シナリオやキャラクターやセットといった映画的要素以上に、ティム・バートン監督のアニメーションへの溢れんばかりの情熱になにより感動させられたのでした(今回、長編アニメーションとしては初監督というのも大きいと思います)。それは、およそ完成度などという分かりやすい尺度で量 れるものではありません。それを理由に『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(93年/ヘンリー・セリック監督)と単純比較して本作を不当に貶めるような人がいるとしたら、お門違いもいいとこです。その意味で、『ペイネ 愛の世界旅行』(74年/チェザーレ・ペルフェット監督)と近い感触もあります。この映画は誰彼問わずオススメできるものではありません。しかし、アニメーションの力を信じたい人にとって、こんなに愛すべき映画はないのではないでしょうか。そして、あの甘く切なく美しいラストシーンが許されるのは、今、ティム・バートンしかいない、ということだけは、そっと書き留めておこうと思います。

『アワーミュージック』で、変わったとか、分かりやすくなったとか、いろいろ言われているようですが、ゴダールはやっぱりゴダールでしかなかった、ということを再確認しただけでした。それでもゴダールを観る、ということは何事にも代え難い楽しい体験です。これは『勝手に逃げろ/人生』と同じぐらい好きでした。

『サイドウェイ』は、上質の短編小説のような豊かな味わい。大人の映画でした。セリフを発していないときの俳優たちの何気ない顔がすごくいい。こんな映画もっと観たいと思うのですが、この手の映画を作るのが、実は一番難しいんだと思います。

実は『きみに読む物語』にもこれに近いテイストがあって、本当は『サイドウェイ』と順位 を入れ替えてもよかったんですが、CMだけでは飽き足らず本編のラストにまでしゃしゃり出てきた某ミュージシャンの厚かましさにより若干減点となりました。映画自体は、緻密な画面 構成と俳優たちの演技のコントラストが素晴らしい見事な出来栄え。オープニングシーンの美しさに目を奪われ、そのテンションはラストシーンまで落ちることなく持続します。エンドタイトル後にあんな落とし穴さえなければ…。

映画で風刺を試みる場合、そこには多少なりともリスクが伴い、ともすれば作品的にも退屈な代物になりかねなません。その点『チームアメリカ☆ワールドポリス』はどちらもクリア。真っ当な風刺コメディ映画として思いっきり笑わせてもらいました。彼らはどうしようもない映画ばかり作ってるので誤解されがちですが、センスが良くなかったら、こんな映画は作れないと思います。

ティム・バートンがアニメーション愛ならチャウ・シンチーは功夫(クンフー)愛といったところでしょうか(原題はずばり『功夫』ですし)。思い入れが深くなければ、あれほど切れ味鋭いクンフーアクションは撮れないでしょう。往年のクンフースターを起用したのも、なにより自分が戦ってみたいから、というファン根性丸出しの快感主義なところがとても香港映画らしく、その幸せな祝祭感が映画全体に漲っていました。

ウディ・アレンの新作が観られる年は、それだけでちょっと得した気分になります。『さよなら、さよなら、ハリウッド』は、『スコルピオンの恋まじない』よりやや薄味だったものの、それでも当たり前のようにアベレージ超え。もはや何を撮ってもOKという気がしてきました。

アメリカ映画の良質な部分を一手に引き受けているのがクリント・イーストウッド監督ではないでしょうか。数年前までの不当な扱いを思えば、アカデミー賞受賞はとても喜ばしいこと。ですが、この難しいテーマで出演までするのはやや厳しかったような印象もあります。それを差し引いてももちろん素晴らしいのですが、ぼくは、どちらかと言うと『ミスティック・リバー』の方を評価します。

『ライフ・アクアティック』はどこが良いのか自分でもよく分からないのですが、妙に惹かれてしまう困った作品でした。毎年こういう作品が一つはあります。自分のデイヴィッド・ボウイ熱が再燃したので、きっと映画に力があったんでしょうね。

今、最も多作でメジャーな映画監督、スティーヴン・スピルバーグ氏ですが、作る映画全てがどことなく病んでいるように見えるのはなぜでしょうか?『宇宙戦争』もとんでもなくヘンテコな映画でした。そして、そこが素晴らしいと思います。この人はM・ナイト・シャマラン監督の好敵手かもしれません。

 

今年もいい映画に出会えますように、2006年につづく。

■ キスキス・アワード2004
■ キスキス・アワード2003
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